lux et veritas.

i continue to write my own way.

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人間が人間であり、彼の世界に対する関係が、人間的関係であるとしよう。その時は愛を引き出しうるのは愛のみであり、信頼を引き出しうるのは信頼のみであり、以下同様である。もし君が芸術を楽しみたければ、君は芸術的な素養のある人間でなければならぬ。もし君が他人を動かしたいと思えば、君自身が本当に他人を刺激し、励ますような力を持った人間でなければならぬ。人間および自然に対する君の関係のひとつひとつが、君の意志の対象となるものに対応した、君の真の個人的な生命の特定の表現でなければならない。もし君が人を愛しながら、その相手の中に愛を呼び起こさないとすれば、すなわちもし君が愛する人間としての自らを表すことによって、自分を愛される人間とすることができないとするならば、その時は君の愛は不能であり、一つの不幸である。

—マルクス

「ジャン・クリストフ」第八巻より - ロマン・ロラン

親しき友よ。僕が狂人のように立ち去ったのを恨まないでくれたまえ。僕はまったく狂人だ。それは君も知ってることだ。しかししかたがない。僕は僕以外のものになり得ないのだ。君の親切な待遇を感謝する。ほんとうにうれしかった。しかし君、僕は他人といっしょの生活に適してる人間ではない。生活にさえ適してる人間かどうか、怪しいくらいだ。片隅に引きこもっていて、人々を愛する——遠くから愛するのが、僕には適当なのだ。そのほうが用心深いやり方だ。人々をあまり近くで見ると、僕は人間嫌いになる。しかも僕は人間嫌いにはなりたくないのだ。僕が人間を愛したい。君たちみんなを愛したい。ああ僕はどんなにか、君たちみんなに善をなしたいことだろう! 君たちを——君を、幸福ならしめることが僕にできるなら! おう僕はどんなにか喜んで、僕のもち得るすべての幸福をもその代わりに投げ出すだろう!……しかしそれは僕の力に及ばない。人はただ他人に道を示すことができるばかりだ。他人に代わってその道を歩いてやることはできないのだ。人は各自にみずから自分を救うべきである。君自身を救いたまえ。君たち自身を救いたまえ! 僕は深く君を愛している。

(豊島与志雄訳)

「ジャン・クリストフ」第七巻より - ロマン・ロラン

「君たちは何を待ってるのか。仕事を天に引き受けてでももらいたいのか。そら、ちょうど見てみたまえ。雪が降ってから三日になる。雪は街路を埋め、パリーを泥海にしている。が君たちは何をしてるのか。君たちを泥水の中に放っておく施設にたいしては非難の声をあげている。しかし君たち自身はそれから脱しようとしているか。あきれたことだ。腕を拱いてばかりいて、だれも家の前の舗道を掃くだけの勇気をもっていない。国家も個人もともにその義務を尽くしていない。両者たがいにとがめ合って責を免れたと思っている。君たちは数世紀間の君主主義的教育のため、自分自身で何にもしないことに馴れきっていて、奇跡を待ちながらいつもぼんやり天を仰いでるような様子だ。がここに可能な唯一の奇跡は、君たちが行動の決意をするということだろう。ねえ、オリヴィエ、君たちはたくさんの知力と美徳とをもっている。しかし血が君たちには不足している。第一に君には不足している。君たちのうちで病衰してるものは、精神でも心でもない。それは生命なんだ。生命が逃げ去りかけてるんだ。」

「もし君たちが、こんなに骨折ってなんの役にたつかを、闘ってなんの役にたつかを、なんの役にたつかということを、みずから怪しむならば……よく覚えておくがいい……それは、フランスが死にかかってるからであり、ヨーロッパが死にかかってるからであり――わが文明が、千年余の苦悩によって人類が築き上げた驚嘆すべき作品が、もしわれわれが闘わなかったならば覆滅する恐れがあるからである。祖国が危険に瀕しているのだ。わが祖国ヨーロッパが――なかんずく君たちの小なる祖国フランスが、危険に瀕している。君たちの無情無感がそれを殺すのだ。君たちの元気が消滅するにつれ、君たちの思想が諦めにはいるにつれ、君たちの誠意が働きを止めるにつれ、君たちの血が無駄に一滴ずつ涸れてゆくにつれて、祖国は死んでゆくのだ……。奮起したまえ。生きなくてはいけない。もしくは、死ななければならないとすれば、立ちながら死ぬべきである。」

(豊島与志雄訳)

『車輪の下』より - ヘルマン・ヘッセ

われわれの慰めとするところは、真の天才者にあつては、ほとんど常に傷も見事に癒着し、学校なぞ無視して立派な作品を創り、他日死んでからは、時のへだたりの快い後光につつまれ、幾世代にもわたつて、後世の学校教師から傑作として、また高貴な範例として持ち出されるような人物に彼らがなつて行くことである。かくて学校から学校へと、規則と精神との間の戦いの場面はくりかえされるのであり、再三再四われわれのお目にかかる光景は、いつの年にも姿をあらわし来る少数の一段と深く価値ゆたかな精神の持ち主たちを、国家と学校が息もつかずに殴り殺そうとかかつており、その根本からへし折ろうと骨折つている光景なのである。しかしながら、後日われわれの国民的財宝をゆたかならしめるのは、なかんずく学校の教師に憎まれたものであり、しばしば処罰された者、脱走した者、追放された者であることは毎度のことなのだ。しかし幾多の者は——その数、いくばくぞ? ひそかなる反抗に身をすりへらして、没落して行くのである。

(秋山英夫訳)

鳥のようにこの世界の外に飛び出したい。

ーエリザベート皇后

『デーミアン』より - ヘルマン・ヘッセ

しかし別の時に彼女は私に他のお伽噺をした。それは望みのない恋をしている男の話だった。彼は全く自己の心魂の中に引きこもり、恋のために燃え尽きてしまおうと思った。世界は彼にとっては消え失せた。彼はもはや青空や緑の森を見なかった。小川は囁かず竪琴は響かなかった。すべてのものは沈み去り、彼は貧しく惨めになった。しかし彼の恋はつのった。そして彼は恋する美しい女を我が物にするのを諦めるくらいなら、むしろ死んでしまうほうがはるかにいいと思った。その時彼は、自分の恋心が自分の中の他の一切の物を焼きつくしたのを感じた。そして恋は力強くなり、引きに引いた。そして美しい女は引き寄せられねばならなかった。彼女は来た。彼は彼女を抱きよせるために両腕を開いて立っていた。しかし彼女が彼の前に立つや否や、彼女は全然別の物になってしまった。即ち彼は自分が失った世界の全部を自分の方に引き寄せたのを感じ且つ見ておののいた。世界は彼の前に立ち、彼に身をゆだねた。空や森や小川など、あらゆるものが新たな色を帯びて生々と且つ晴れやかに彼に向い来り、彼のものとなり、彼の言葉を話した。かくて単に女を得るということの代わりに、彼は全世界を胸に抱いた。そして空にかかるすべての星が彼の中に燃え、彼の心の中に悦楽の火花を発した。——彼は恋をしたが、そのため自分自身を発見したのだ。ところが世の多数の人々は、恋をして、そのため自分自身を見失ってしまう。

(相良守峯訳)

『赤い戦車』- 戸川純

水彩画より油絵の凝固した色味にも似た
迷いなく確固たる動かぬ血の色の野望

Red Bloody The Will Is
たえざる意志の保持なり 

重ねて同じ色を塗り続け幾たびになろう
しかして立体化した形状の絵すなわち成就

辛酸はだいだいの
It’s Not More Red Than My Hard Will

突き上げるあつい想いが描きなぐった血の色の
ペインティングス まるでキューブな自己実現
生きるために生まれたんだと確信する色 

重ねて同じ色を塗り続け幾たびになろう
しかして立体化した形状の絵すなわち成就

辛酸はだいだいの
It’s Not More Red Than My Hard Will 

傷を染める清冽な赤 凝視するほど傷は癒える
ペインティングス 赤く輝く血は源泉
死人じゃないってこれほどまでに確信する色

突き上げるあつい想いが描きなぐった血の色の
ペインティングス まるでキューブな自己実現
生きるために生まれたんだと確信する色

『漂泊の魂 作中詩』- ヘルマン・ヘッセ

霧ふれば
花々はみな
枯れ凋む
人もまた
みまかりて
墓に葬られむ

人々も
花にしありき
春くれば
帰りて咲きて病なく
なべての罪も赦されむ

(相良守峯訳) 

『LONDON BRIDGE』- ヴェルレエヌ

あの黒い水をみてごらん
「人市(シティ)」の汚物を押し流す泥の大河をごらん。
お前はそこに見るだらう、時に
日光を受けて金いろに光る藁屑の流れて行くのを。

出來るなら次ぎに、僕の心の中をごらん!
お前はそこに仄かな光を見るかも知れない
これは僕の心が、むかし美しかつた頃の、思ひ出のやうなものだ
これがある為めに、心はせめて、いくぶんかなぐさめられる。

どうやら希望は日光に似てゐる
言はばどちらも明るさだ
一つは荒んだ心の聖い夢となり
一つは泥水に金の光を浮べてくれる。

(堀口大學訳)

『Erklärung』- Heinrich Heine

Herangedämmert kam der Abend,
Wilder toste die Flut,
Und ich saß am Strand, und schaute zu
Dem weißen Tanz der Wellen,
Und meine Brust schwoll auf wie das Meer,
Und sehnend ergriff mich ein tiefes Heimweh
Nach dir, du holdes Bild,
Das überall mich umschwebt,
Und überall mich ruft,
Überall, überall,
Im Sausen des Windes, im Brausen des Meeres,
Und im Seufzen der eigenen Brust.

Mit leichtem Rohr schrieb ich in den Sand:
“Agnes, ich liebe dich!”
Doch böse Wellen ergossen sich
Über das süße Bekenntnis
Und löschten es aus.
Zerbrechliches Rohr, zerstiebender Sand,
Zerfließende Wellen, euch trau ich nicht mehr!
Der Himmel wird dunkler, mein Herz wird wilder,
Und mit starker Hand, aus Norwegs Wäldern,
reiß ich die höchste Tanne,
Und tauche sie ein
In des Ätnas glühenden Schlund, und mit solcher
Feuergetränkten Riesenfeder
Schreib ich an die dunkle Himmelsdecke:
“Agnes, ich liebe dich!”

Jedwede Nacht lodert alsdann
Dort oben die ewige Flammenschrift,
Und alle nachwachsenden Enkelgeschlechter
Lesen jauchzend die Himmelsworte:
“Agnes, ich liebe dich!”